歯周病(歯槽膿漏)とは?
歯周病(歯槽膿漏)とは、歯を支える周りの組織(歯茎や骨)に起こる病気のことを指し、細菌の感染によって発症する炎症性疾患です。
もう少し詳しく説明すると、歯の歯茎に近い部分にできた歯垢(プラーク)の中にいる、細菌によって引き起こされる病気です。
日本臨床歯周病学会のレポートによると、まず、歯垢(プラーク)に住み着く虫歯菌が歯と歯茎の間にできた隙間(ポケット)内に入り込み、そこで歯周病の原因となる細菌が大量に増殖していきます。
口に中にいる細菌の種類は非常に多いのですが、このようなポケットに住み着く細菌は強い匂いを放つ物質を放出します。
この匂い物質は、卵や野菜が腐ったときに放出されるガスと同じ成分によって構成されています。
ヒトの嗅覚は常時、対象となる匂いをかいでいると麻痺してきますので、自分の口臭には気づきにくくなってしまいます。
歯周病を煩っていると痛みがあるだけではなく、このような不快な臭いがお口から発生してしまいます。
感染症である歯周病は感染者数が多く、ギネス・ブックにも掲載されていることをご存じでしょうか。
日本人の場合、20歳代で約7割、30~50歳代は約8割、60歳代は約9割が歯周病の有病率であると、生活習慣病の調査・統計でわかっています。
この感染症は感染者数が多いだけでなく、歯に関する重大な疾患である歯の脱落を引き起こす原因の第一位でもあります。
このように歯周病は、非常に健康リスクの高い病気であるとも言うことができます。
歯周病の進行度合いと症状
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歯肉炎
歯肉ポケット:2~6mm
歯と歯茎の間の隙間にある歯垢(=細菌)の影響により、歯茎が炎症を引き起こし、腫れてしまいます。 -
軽度歯周病
歯周ポケット:3~5mm
歯周病菌が歯の周りの組織にさらに侵入し、歯茎の腫れが大きくなります。 さらに、歯を支えている土台である骨までも、歯周病菌に侵され始めます。 -
中等度の歯周病
歯周ポケット:4~7mm
炎症がさらに拡大して、歯の周りにある骨が歯根の長さの半分近くまで破壊されているため、歯がぐらつき始めます。 -
重度歯周病
歯周ポケット:6mm以上
歯の周りの骨が半分以上破壊されてしまい、歯は完全にグラグラと動き、いつ抜け落ちるかわからない状態です。
歯周病と身体との関係性
歯周病は口腔中の歯の周囲だけでなく、歯周病菌が血液中に混入して体中を巡ってしまうと、以下のような全身のあらゆる部位で発症する病気の原因となる可能性があります。
特に、歯周病と糖尿病とは相互作用することが明らかになっています。
歯周病にかかっていると糖尿病を発症する確率が2.6倍も急増するといった調査結果もあり、口の中の病気だけでは済まされないということです。
- 動脈硬化
- 心疾患
- 脳血管疾患
- 早産や超低体重児出産
- がん
- 肺炎
- 糖尿病
- 高血圧
- メタボリックシンドローム
- 老化
・・・などが挙げられます。
歯周病(歯槽膿漏)度をセルフチェック!
歯周病(歯槽膿漏)は、前述したように全身の健康に大きな影響を及ぼす病気です。
以下のような症状に対して覚えがある場合、歯周病を発症している疑いがありますので、歯科医院での検査をお勧めいたします。
項目に2つ以上該当するあるいは思い当たるようなことあれば、要注意です!
5つ以上該当する場合では、危険な状態と考えられます。
歯科医院へ出来るだけ早く行き、取り返しがつかない事態になる前に対策を講じましょう!
- 歯を磨くとき出血する。
- 歯と歯との間に隙間が広くなった。
- 歯茎が赤く腫れている。
- 歯茎が減ってきた。
- 自分でも自身の口臭を感じる。
- 歯茎に痛みやかゆみがある。
- 歯がぐらぐらと動く。
- タバコを常に吸う習慣がある。
- 歯茎から膿が出ている。
- 食事をするときなど噛むと痛みがある。
- 歯が浮いたような感じがする。
歯周病への対応策
歯周病で侵されてしまう骨や歯茎とは、住宅に例えると、住宅全体を支える基礎部分である土台に該当します。
いくらきれいな住宅にしようとしても、シロアリ(=細菌)が棲み付いた家では、リフォーム(=詰め物、被せ物など)
などしても、住宅自体が崩壊(=歯が抜け落ちる)してしまいます。
口腔環境上の緊急性が認められる場合以外は、歯を支える土台を侵している歯周病の治療から処置していきます。
- 顕微鏡検査による口腔内細菌の確認
- ご自身のお口の中に棲んでいる細菌を、リアルタイム映像で歯科衛生士と一緒に見ていただきます。 ご自身のお口の状況を認識していただくことは、治療への積極的な取り組み意識を高めていただくために行っています。 それと同時に、歯科衛生士は細菌の種類、運動量、数、大きさなどを確認することで、おおよそのリスクを判断します。
- ポケット内の歯周病菌の確認
- 歯と歯茎の間にある溝(ポケット)の深さを測定します。 また、歯茎の腫れ、骨の溶け具合や歯石の有無などについても確認作業を行います。
- 口腔環境の改善を目的としたブラッシング指導
- 我々が口の中の細菌をコントロールするには、物理的に限度があります。 しかし、ご自身の歯と歯茎を清潔に保つことは、自宅での正しい歯磨き(ブラッシング)を行うことができれば可能となります。 口腔環境が清潔に保たれていれば、細菌の種類を増やすことなくさらに爆発的な増殖を避けることができます。 歯と歯茎の健康的な状態をできるだけ長くキープできるように、正しいブラッシングの方法をマスターしてください。
- 歯周病治療の実施
- 歯周病の進行度合いにより、治療回数は2~7回と回数に幅があります。 これは歯磨きができている(=見えている)部分でなく、歯磨きでは洗いきれない歯茎に隠れている歯石を取り除くためです。 この歯石を取り除く処置ですが、数ミリ程度の細かい作業が要求されるため、慎重かつ正確に行わなくてはならないので、歯石の状態によりそれ相応の時間が必要とされます。 治療方法や回数などはもちろん、患者様と相談しながら治療を進めていきますのでご安心ください。
歯周病の予防
- 毎日のブラッシング
- 毎日、きちんとブラッシングをして、丁寧に歯垢(プラーク)を取り除くことが大切です。特に、歯と歯との間や歯と歯茎との間などは、念入りにブラッシングしましょう。
- 歯の定期検診の受診
- 歯科医院における検診を定期的に受診するのがよいでしょう。
少なくとも半年に1回のペースで受診し、歯石除去と歯の健康チェックを行いましょう。
定期検診の受診により歯周病の早期発見につながるばかりではなく、以下のようなメリットも享受することができます。
歯が白くなる(審美性が向上します)
表面についたタバコのヤニや茶シブなどの汚れをとり、歯が健康的な白い歯になります。
歯肉が健康になる
歯の付け根に潜んでいる細菌が減り、歯肉が引き締まり、歯周スポットなどができにくくなります
虫歯が防げる
歯垢(プラーク)を除去を定期的に行うため、虫歯菌が口の中に残留しにくくなります。 その結果、虫歯の発症する可能性を下げることができます。
- 早めの診療
- 発症初期の歯周病は治療すれば、完治することができる病気です。
しかし、歯周病が進行してしまい歯を支えている骨が侵され始め溶けてしまうと、溶けた部分の骨は元通りに復元しない場合が多くあります。
また、歯周病に犯されて歯の根っこが歯茎から露出した状態が長期間にわたると、歯周病の影響で動いてしまったり、傾いてしまったりした歯を本来の正常な位置に戻せない場合もあります。
このように、歯周病の重症度が増すにつれて、元の健康的な歯の状態に戻すことが困難となる可能性が増します。 少しでも歯周病かもしれないと思われる自覚症状が認められたら、痛みがなくても、積極的に歯科医院で診察を受けましょう。